ライトヲタが『推し』との全員サイン会で致死量の尊さを味わうと

2020年1月初旬、某噴水広場。韓国発女性アイドルグループの最新アルバム発売記念イベントが行われました。

 

間違いありません。私は、この瞬間のために生まれてきました。

 

たった1枚CDを購入しただけで、全員サイン会の当選を果たしたのです…。でで~ん‼

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知らぬ間にどこかで徳を積んでいたのか、それとも、これからとんでもない災いが私の身に降り掛かるのか。勘弁してください…。

 

日本デビュー1周年を迎える記念すべきリリースイベントの初日に私の元に舞い降りた僥倖。しかし、正直言うと、素直には喜べなかった。色々あったのです...聞かないで...。

 

そうは思いながらも、メンバーの皆に伝えたいメッセージを必死で考えた結果「メンバー全員が健康でいてほしい」という強い想いが私の心の中にありました。

 

それを、是非ともサイン会で伝えたい。

 

どうすればいいのだろうか...。考えあぐねた末、ふと、あるアイデアが頭を過る。

 

そうだ Loft、行こう。いやなんでやねん、せめて京都行け。

 

アナウンスも始まり、サイン会までの時間が刻々と迫っていたので、インフォメーションのお姉さんにLoftまでの最短距離を教えてもらいました。

 

お陰様で、迷わずその場所にたどり着けました。運命でっしょ...?

 

すぐさまスケッチブックと緑色の極太マッキーを購入。

 

一般の方々も大勢いるであろう2Fの簡易休憩椅子に腰を掛け、先ほど購入したスケッチブックの真っ白なページに、同じく買ったばかりのペンで「건강기원 (健康祈願) 、○○○○○○○○」と書き込む。

 

私はいちファンとして、いや、それ以上に同じ時代を生きるいち人間として、メンバーの皆に伝えたいことがあるんだ...。

 

ところが、謎の使命感と共に予期せぬ羞恥心も顔を出す。

 

韓国発のアイドルグループがイベントをやっている日、同じ空間でスケッチブックにでかでかと韓国語の文字を書き込むことがこんなにも恥ずかしいなんて...。しかも1人だから余計にはずいよぉ...

 

弱オタ陰キャの私は、慣れない状況に顔から火が吹き出そうでした。だがしかし、もうそんなことなど構ってはいられない。今、この瞬間から、私は ”陽キャ” の仲間入りを果たすのだぁぁ...!!!

 

緊張によって震える手を制しつつ、上の文言を白いキャンバスに書き終えた私は、すでに召集の掛かっていたサイン会当選者の列に急いで並び始めました。

 

天井まで続く吹き抜けと光沢感のある乳白色の柱に囲まれた開放的なステージ。光をふんだんに集めたような場所で、お手製の健康祈願ボードを両手に抱えながら呆然と立ち尽くす。

 
高ぶる気持ちを全くもって制御出来ないので、周りをキョロキョロしたり、健康祈願ボードを見せる位置を調整したり、メンバーに伝えたいことをひたすら頭の中で繰り返したり...。
 

直近の某音楽番組で見せてくれたあの輝かしいステージの数々に対しての感想、メンバーへの感謝の気持ち、そして全身全霊で『健康祈願』の旨を伝えたい...。

 

そうこうするうちにあっという間に時間は過ぎ、まもなく "聖地" へ入場開始。私を含め、当選した30人ほどのファンの方たちが一列になって、メンバーが待ち構えるステージへと歩みを進めていく。正直、端から見れば何かの儀式に近かったと思う。さぁ、七福神を参拝じゃけ~~!!

 

スタッフから付箋とペンを渡され、平仮名で「てぃーてぃー(筆者のニックネーム)」と記入。それを歌詞カードの最初のページに貼り付け、先ほど作った健康祈願ボードを小脇に抱え、準備は万端。

 

よしっ...(深呼吸)

 

いざっっ、出陣じゃぁぁぁああぁぁあ~!!!チィグゥミヤッッッ......!!!!

 
ブース内に入ると、長机を挟んで各メンバーが横並びに座っていました。私から見て左から右へとサイン会は進行していく。
 

初めに迎えてくれたメンバーは一番左に座っていました。、、、ですが、その隣のメンバーがかなり食いぎみに「コンガンキウォン(健康祈願)!!」と反応してくれて、立て続けに「(字が)綺麗です!!」と褒めてくれました。

 

私「綺麗?」

 

字のことだよね!?と思いつつ、頭の中が"可愛い"で埋め尽くされていく。

 

ブースに入った瞬間、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせながら私を出迎えてくれました。カワウソみたいな小動物を思わせる愛らしい表情とは裏腹に、ファンの心を瞬時に掴む姿は鋭い爪を備えた鷲や鷹のような猛禽類を彷彿とさせる。

 

あっという間に視界全体に『推し』が溢れ、我がハートはいとも簡単にさらわれていきました。あれれ..準備万端でturn upしたはずなんだけど...

 

「可愛い。尊い。可愛い。尊い。。。尊い…。(→、←、→、←、→、→、→、←、→、→、→、←(目の動き)」

 

目線がぶれっぶれになり、狼狽。既に形勢はこちらが圧倒的に不利。敗色濃厚。

 

そのメンバーがよくピカチュウの物真似をするので、この状況をポケモンで例えてみる。こちらは手持ちに一匹しかないのに、強制的に2人のトレーナーからダブルバトルを仕掛けられたような、いわゆる絶望的に不利な状況。

 

!! !!

 

オーマイガールの スンヒとミミ が しょうぶを しかけてきた!

 

推しの輝きが強すぎて、逃げ出したいくらい。

 

ダメだ! しょうぶの さいちゅうに あいてに せなかは みせられない!

 

私が勝手にあたふたしている間、ミミは「てぃーてぃーさぁ~ん!!」と名前を読みながら余裕綽々とサインを書いてくれました。

 

「あぁ~こんにちわぁ...。」

 

ミミとはクインダム見ました!っていうお話を"したかった"。特にTwilightでの自作のラップパートの話。それも叶わず、とりあえずは無言でお手製の健康祈願ボードを指指して「(これ見て!)」と視線を送る。

 

ミミちゃん、いつまでも元気でいてね!お菓子もたまには食べてね!出来ればバトルトリップとかの番組企画じゃなくてプライベートでも日本旅行を楽しんでね!!!

 

雑談さえ出来なかった私は、もちろんそんな気の利いたことは言えない...。さては "陰キャ" だな...⁉

 

気が付いたら、スンヒが私の名前を呼んでいました。

 

スン「てぃーてぃー!」

 

「あぁぁぁ~こんにちわぁ...。(あれ?言いたいことなんだっけ。)」

 

"尊さ"が脳内の神経回路にどん詰まりして、情報伝達機能が正常に機能しない。想像を遥かに超えた尊さに直面した時、人間は、自らの行動指針を見失い、妙にぼんやりとしてしまう。

 

残念ながら私の記憶はそこで一旦途切れ、次の瞬間はユアの困惑ぶりが目に映る。

 

彼女私が付箋に書いた「てぃーてぃー」という奇怪な文字の羅列に戸惑っているようでした。

 

ユアは「て、い...??」と私に向かって疑問形で言葉を投げ掛ける。

 

私「てぃーてぃーです!」

 

ユア「てい...?て...い?」

 

うぅぅぅわっっ、顔ちっっさぁぁ!!??大きめの林檎サイズじゃん...。てか周知の事実だけど、可愛ぃぁぅ...。

 

私「あ、名前ですよ‼ てぃーてぃーって言うっ...」

 

その瞬間、目と目が合いました。目と目が合って胸が、ギュィ----------ンッ!!!

 

これほどまでとは...。こんなにも、どぎまぎしてしまうのですね...。自慢ですが私は一応身長が180cm近くあって、男女問わず、常に見上げられる側なのです。

 

今まで私は生意気にも人間をやらせて頂き、その人生の中で他の人から見上げられた回数は何百、何千、何万、、、贅沢にも、数え切れないほどの上目遣いを見てきました

 

それでも、あんなにも心がキュゥッッ...!!と締め付けられ、茫然自失となったのは生まれて初めて。

 

まるでお人形さんのように小さくて凛々しい顔立ち、大きく開かれた魅惑の双眸、そして「たらこ唇」の元義を根本から覆す、分厚くも麗しい唇。

 

え、なんで!??めちゃめちゃ見てくるよ。。。どうしよぉ。。。助けて。。。

 

ユア「てい…、て、い...??」

 

可愛い過ぎですもう勘弁して下さい。。。そんなに長時間見つめないで下さい。自分の可愛さ、そして尊さを自覚してください。。。いくらファンに向けているとはいえ、可愛さをむやみやたらに振りまくのは立派な ”暴力” ですよ。。。

 

たかが数秒が、永遠みたく長い。あれ、これって死ぬ前に時間が限りなくスローになるやつ...?私、死ぬのかな...。

 

凝固。驚きと混乱で身体が鉛のように動かない。

 

次の瞬間、アリンに見つめられてました。アリンちゃんとの会話はもはや私がひたすらおうむ返しをするといった感じ。

 

アリン「こんにちわぁ~~

 

「あっ、こんにちは...

 

アリン「初めまして。」

 

私「…まして(ペコリ)」

 

サインを書きながら、1回、2回、3回、と私の目を見つめて下さる。

 

口をほとんど閉めたような状態で、少し籠ったような日本語で挨拶してくれるアリンちゃん。真冬の夜、ベッドの上で毛布に包まれている時に感じるあの究極の温かさと柔らかさのような包容力をもった声。それは私の聴覚を優しさで制圧する。

 

そんな声を聞いているだけで、意識が朦朧としていく。耳が完璧にジャックされ、その後は徐々にではあるが、全私がアリンちゃんの瞳に吸い込まれていく。

 

、、、私は、今、、、何をしているのだろうか...

 

もしかして、、、ここは、、、やはり、、、

 

 

 

「初めてでっすねぇぇ...!!」

 

ヒョジョンちゃんの弾けるような明るい声が私を正気へと連れ戻してくれました。すっかり狼狽していた私にとっては、素っ頓狂な声にも聞こえてしまう。いつの間にアリンちゃんはサインを終えてヒョジョンちゃんに渡していたようだ。

 

私「...ぅあっ、そうですね。こんにちは!」

 

指定のページとは違う、ヒョジョンちゃんがソロで写ってるページにサインを書き込んでくれました。

 

ヒョ「てぃーてぃー!

 

残り僅かな体力を振り絞り『健康祈願』をヒョジョンちゃんに向けてアピールしながら、私は何かしらの言葉を発した。

 

それが単なる挨拶だったのか、感謝だったのか、応援だったのか、今になっては知る由もない。最初の1つの可能性が高い。。。

 

自分の余りの不甲斐なさに絶望する間もなく、推しの尊さに浸っている間もなく、そそくさとブースを出なければならなかった。

 

そのあとはまるで、何事もなかったかのように、すかした面持ちで、逃げるように、ステージを後にする。

 

ほんと、あの時の自分の顔を見てみたい。

 

必死に平静を装おい「自分はサイン会なんてとうのむかしに経験済みだし、メンバーと話すことなんざお手のものだぜぇ...!」という空気感を漂わせながらブースを出てきたつもりだったが、その立ち振舞いからは幸せオーラがどばどばと溢れ出ていたに違いない。  

 

どれだけにやけていたのだろうか...。

 

隠せるはずのない顔の綻びを奥底に忍ばせようと奮闘しつつ、私は、1人でひっそりと人混みの中に埋もれていった。

 

すっかり人込みに紛れ、ファン代表者から ”儀式” を見守るオーディエンスに成り代わった時、私は思った。自分の現在の尊さ耐久指数を考えると、まだまだ1対1が限界。それが、私が善戦できるかどうかの関の山。

 

万一、今回のように複数メンバーとの対面となれば、尊さが基準の限界を超え、ポケモンのゲームに出てくるようなテンプレ表現しか発することの出来ないロボットと化してしまう。

 

私が体感する尊さには致死量なるものがあったのです。過剰摂取は厳禁。必ず、ヤられるから。というか、ヤられました。

 

「こんにちは」「ありがとうございます」「初めまして」

 

私みたいなライトヲタクが『推し』との全員サイン会で致死量の尊さを味わうと、3パターンの言葉を発することしかができなくなるのでした。ポケモンが一個体あたりに覚えられる技の数よりも少なくて、なんだかこうして振り返ると悲しくなってきます…。

 

でも大丈夫、次があるさ!!!(n回目

 

以上、こんなにも長い文章を読んで頂き、本当にありがとうございました。メンバー全員の健康と安泰を祈って終わりとします。