OH MY GIRLと歩む「あなた」と「わたし」の物語

OH MY GIRLが描く「あなた」と「わたし」の絶妙な距離感。その距離感が時に恋愛の物語、またはファンとの物語として紡ぎ出されるとき、果たしてそこには唯一無二の音楽世界が存在するのではないでしょうか。以下デビュー時から『Guerilla』までの楽曲を歌詞ともとに振り返りながら、その世界の全体像を紐解いていきたいと思います。

 

 

タ、タ、タン、タタンッ♪ タ、タ、タン、タタンッ♪

 

 

オンマッ、オマッ、オッ、マィッ、ガォ~~ㇽ♬

 

こちらは1stミニアルバム『OH MY GIRL』に収録されている『OH MY GIRL!』という曲。グループ名をことさら感嘆符で強調するこの楽曲は、同アルバムの”第一番”でもあります。そんなユニークな曲の、ある歌詞がとても印象的なのです。

 

이제 펼쳐 질 꺼야 너와 우리의 세상(今広がっていく あなたとわたしたちの世界)

- OH MY GIRL!

 

この瞬間から「あなた」と「わたし」は絶えず同じ世界で歩を進めていったのではないでしょうか。このことがあながちファンの妄想とも言えないような根拠が、OH MY GIRLというグループの音楽に表れているのではないかと思うのです。

 

今からおよそ5年前。まだあどけなさの残るメンバーたちが歌う『CUPID』や『궁금한걸요(Curious)』は、恋の熱に浮かされた少女の強がりや不安感を語っているよう。

 

사랑에 빠진 얼굴을 내게 보여줘요 그대(恋に落ちた顔をわたしに見せてよ、あなた)
보여줘요 (見せてよ)

- CUPID

 

 

『CUPID』にみる強気な姿勢とは裏腹に『궁금한걸요(Curious)』では、好きな人の心の内がどうしても気になってしまう少女の無垢な恋心を描く。黄色いお花や気の知れた友人に、そのことを尋ねています。

 

그대는 날 사랑 한다(あなたはわたしのこと好き?

날 사랑 안 한다 어려워(それとも好きじゃない?難しい)

좀 유치 하지만 나 궁금한걸요(少し幼稚なんだけど、わたし気になるの)

- 궁금한걸요

 

このデビューアルバムを聴いていると、無性にある場面を思い浮かべてしまう。自分から積極的に距離を縮め、”きっかけ”を作ろうとするも、却って空回りしてしまう、そんな甘酸っぱくて切ない恋の場面を。

 

続く2ndミニアルバム『CLOSER』では、そんな不安と寄り添う自分と、不安を強く跳ね除けようとする自分とが混在しているような印象を受けます。

 

同アルバムに収録されている『SAY NO MORE』の歌詞、”天使と悪魔の喧嘩”には、そうした混沌がよく描写されていると感じます。カップリング曲である『ROUND ABOUT』や『PLAYGROUND』の強気な少女を通して映し出される、意地っ張りで一見大人びたような雰囲気。一方、熊のぬいぐるみに"恋ばな"を打ち明ける『SUGAR BABY』の内気で繊細な雰囲気は、それとは非常に対照的。

 

このように「わたし」のなかで自分の気持ちが”喧嘩”しているような印象はありますが、アルバム『CLOSER』の名の通り、自分の気持ちに困惑しながらも、その気持ちに向かって少しづつ”近づこう”とする姿は、『CLOSER』という楽曲が持つ神秘的かつ幻想的な世界観を限りなく儚いものとして昇華しているのだと思います。

 

한 걸음 closer 내 맘 (一歩 Closer 私の心)
한 뼘 closer to you (一寸 Closer to you)

- CLOSER

 

一歩ずつ「あなた」に近づく「わたし」の心。しかし、それでもなお、その奥底に沈殿する”秘密”を誰にも明かすことはありません。夜空に輝く星たちやお月様を除いては。

 

안아서 데려가 줘 to you(抱きしめて、連れて行って、あなたのところへ)

- CLOSER

 

上の歌詞は曲中の最後に割り当てられたユアのパート。”데려가 줘(連れて行って)” そう訴えかけてくるのですが、彼女の愁いを凝縮したような瞳がその実現性をことごとく打ち砕いているようで、どうしようもなく、胸が締め付けられてしまうのです。

 

 

少女の内なる葛藤は、3rdミニアルバムの『PINK OCEAN』から徐々に変化していくように思います。キューピッドを頼ったり、星に祈りを込めたり、すなわち第三者に恋を委ねたりするのとはまた違った雰囲気が出てくるのではないでしょうか。

 

タイトル曲の『LIAR LIAR』では、めくるめく恋煩いに対して”どうすればいいんだぁぁぁ”と自問自答を繰り返し、想像の世界に逃げ込んでしまう描写が印象的です。現実と理想の狭間で錯綜しながらも自ら愛の形を見つけていく姿は、今までよりも鮮明に光り輝きます。

 

내 맘은 훌쩍 널 향해 갔어
わたしの心は、ふわりとあなたに向かって行った

- LIAR LIAR

 

溌剌としたアップテンポの曲調が一変し、ヒョジョンが上の歌詞を歌い上げるとき、少女の葛藤は文字通り”ふわりと”その重さを軽くしたのではないかと思います。

 

 

このアルバムでは段々と恋に素直になっていく様子が見て取れ、『B162』ではその様子が実に顕著。曲中に”ツンと尖ったトゲも愛してね、こんな不安げなわたしを愛してね”と歌うパートがあります。そこには、思春期特有の強がりや不安は少し薄れ、恋に素直に向き合おうとする少女の姿があるのではないでしょうか。

 

以下パートは、およそ2年後に発売される『秘密庭園』を彷彿とさせます。

 

너의 정원에 핀 유일한 조그만 나의 맘(あなたの庭に咲いた、たった一つの小さなわたしの心)

- B612

 

そして、少女はついに”愛”を見つけてしまう。同アルバムの収録曲である『I FOUND LOVE』は確信犯だと思います。チャジャッタァァァ~~~‼

 

그렇게 찾던 비밀상자 옆엔 나라는 열쇠(あんなに探していた秘密の箱の横に、わたしという鍵)
found love
상자 안에 또 다른 너를(その箱の中に、もう1人のあなたを)found out
- I FOUND LOVE 

 

「わたし」が笑えばつられて「あなた」も笑い、「わたし」が突然近づけば「あなた」は私みたいにとっても緊張していた。代表作の『一歩二歩』にみる、遠ざかれば近づき、あからさまに近づくこともしないあの絶妙な距離感の延長戦上には、春の陽光を全身に受けながら愉しげにピクニックをするふたりの姿が浮かび上がってくるようです。

 

네가 한 발짝 두 발짝 다가오면 난 그대로 서 있을게(あなたが一歩二歩と近づけば、わたしはそのまま立っているわ)

 

우리의 사랑이 빠르게 느껴지지 않게(わたしたちの愛が早く感じられないように)

 

- 한 발짝 두 발짝(一歩二歩)

 

続くリパッケージアルバムである『Windy Day』はそうした系譜を受け継ぐ形で、従順な恋心を風に回る風車に例えています。吹き荒れる風に身を任せ、”髪が乱れても平気だよ”と歌って見せるジホを見ていると、恋に翻弄されていた少女の”あの頃”が、まるで嘘であったかのように思えてくる。

 

 

너를 볼 때마다 돌아가는 바람개비. 이건 내가 너를 많이 좋아한단 증거(あなたを見る度に回る風車。これは、わたしがあなたをとても好きな証拠。

- Windy Day

 

そして、”恋”に身を委ねた先の『Coloring Book』では、以下のフレーズをしきりに繰り返す。

 

날 데려가(わたしを連れて行って)

 

仮に『CLOSER』の幻想的な世界観を表す色がパステルカラーだとすれば、『Coloring Book』の明朗な世界観は、それとは対照的な原色。少女の不安げな恋の色彩は、およそ1年半の時を経て、底抜けに明るい色で埋め尽くされるのです。弾けるような暖色に染まった少女たちの、朗らかに歌うその声が ”날 데려가(わたしを連れて行って)”というフレーズを繰り返すとき、かつてお月様に願いを託した彼女たちの切ない歌声が頭の中に響き渡ります。以前にも増して、その言葉はより強い実現性と積極性を帯びたのではないでしょうか。

 

B面の『Real World』と『In My Dreams』は、童話の中の世界に逃げ込んだ少女の内世界を徐々につまびらかにしていく。夢から現実へ、現実から夢へ。その間を右往左往し、彼女らの存在世界がなかなか判然としない、というような印象を受けます。

 

そんな中、5thミニアルバム『秘密庭園』がやってくる。

 

나의 비밀정원. 난 아직도 긴 꿈을 꾸고 있어.(わたしの秘密の庭。わたしはまだ、ずっと長い夢を見てるの。)
-Secret Garden
 
”ずっと長い夢”
 
つまり、あの物語は続いていたのです。しかしながら、聴く側はここで寝っているわけにはいきません。
 
『CLOSER』と『一歩二歩』に並び、私は個人的にこの『秘密庭園』という曲がOH MY GIRLの"存在証明"だと思っています。
 
처음으로 너에게만 보여줄게 나를 따라(初めからあなたにだけ見せてあげるわ、わたしについて来てね)
Come with me bae 손을 잡아(手を握って)you and me 
-Secret Garden
 
「나를 따라(わたしについて来て)」
 
 
『CLOSER』や『Coloring Book』などの楽曲に見るように、これまでは”あなたについていく”だったのですが、ここで初めて「わたし」が「あなた」の手を取り、ある場所へと連れ出してくれると言うのです。
 
その場所とは、今まで誰にも話したことのなかったという大切な場所、つまりは「わたし」の心の内。お月様や熊のぬいぐるみにしか打ち明けて来なかった自分の”秘密”を、実直に、そして自発的に「あなた」へと打ち明けてくれるのです。
 
こうして「わたし」が自らの意思で「あなた」を引き連れていったとき、OH MY GIRLの『秘密庭園』が初めて音楽番組で1位を獲得したのでした。
 

 
 ”これからは、私たちOH MY GIRLが、あなた(ミラクル)を連れていくからね。”とでも言わんばかり。”나를 따라(わたしについて来て)”という歌詞に、更なる重みが加わったように思います。
 
いたずらにやってきた恋への葛藤や不安を乗り越え、翻弄されながらも自らの気持ちに向き合ったことで、胸に募った想いの丈が次第に明かされていく。そこで”タイムカプセル”を解除すれば、”あの頃”の記憶が溢れ始めるのでした。
 
-첨 사랑이란 열병을 앓았던 나이. (初恋という熱病にかかった歳。)
 
-열여섯 그리고 그 여름은 뜨거웠었지.(16歳、あの夏は暑かったよね。)
- Sixteen
 
まるでデビューアルバムの『OH MY GIRL』を回想しているかのような歌詞。とりわけ”あの夏は暑かった”と言うのは『HOT SUMMER NIGHTS』を連想せずにはいられません。

 

それからおよそ8か月の時を超え、あの時の花火を回想するとき、「あなた」と「わたし」のふたりだけのお祭が再び頭のなかをめまぐるしく駆け回るのです。ぐるぐると激しく移り変わるEDMをベースにした曲調のなか、寂しげなピアノの音色が身体中にこだまするとき、そのあまりの儚さに私の心の琴線はぷるぷると震え始めるのでした。以下動画はピアノの音を全面に押し出したコンセプトトレーラーです。

 

 

잊지 말아줘(忘れないでね。)Ah ah no no

아주 더 오래 지나도 가끔 날 그려줘(たくさん時間が経っても、たまにわたしを描いてね。)

- 불꽃놀이

 

タイトルからも分かる通り、6thミニアルバム『Remember Me』のテーマは”記憶”。そしてもう1つが”夢”だと思います。その断片が収録曲の『illusion』や『Our Story』にちりばめられています。

 
한걸음 너에게 다가가면늘 같은 마음으로 계속 난 너와 꿈꿀래.(一歩あなたに近づけば、いつも同じ気持ちでずっとわたしはあなたと夢を見る。)
-Our Story

 

어쩌면 사랑이란 me and you 두 사람이 꾸는 꿈(もしかすると、恋って me and you ふたりの見る夢で)

같은 꿈을 나눠 가질 거에요(同じ夢を分け合うのよ)

어쩌면 사랑이란 me and you 보면서도 믿기 힘든 일일 거야(もしかすると、恋って me and you 見ても信じられないことなのよ)

- illusion

 

もしかしたら、恋というものは「あなた」と「わたし」が同じ夢を共有することであり、それでいて、目で見ても信じることが出来ないものなのかもしれない。

 

どうやら『秘密庭園』や『Windy Day』でもそんなことを言っていました。

 

”目で見たものだけを信じるなんて”

 

”本当に大切なものは目に見えない”

 

『다섯 번째 계절(SSFWL)』の歌詞にある”両目を開けたまま見る夢”というフレーズは、そのある種のジレンマを拭い去ってくれたのではないでしょうか。ただ視覚的に見るだけでは感じるに難い”愛”を、普通なら目を閉じて見る”夢”のなかに見つけ出そうとした。私はそのように解釈しています。五番目の季節を経験するなか、これまでひたすらに”恋”に翻弄されてきた少女たちは、自分にとってそれが何であったのかを確信するのです。

 

있잖아 사랑이면 단번에 바로 알 수가 있대(あのね、愛であればすぐに分かるって)
 
헷갈리지 않고 반드시 알아볼 수가 있대(紛らわしいこともなく、必ず見つけられるって)
 
- The fifth season(SSFWL)

 

 

Aing以来のサマーパッケージ『BUNGEE (Fall in Love)』では、”恋”というものに果敢に攻め込む少女たちの自信がありありと描写されているようです。

 

때가 왔을 때 그럴 때 난 용감해(チャンスが来たら、わたしは勇敢になるわ)

고민하면서 망설이진 않을 거야(悩んだり、迷ったりはしないわ)

정했어 난 지금 널 만나러 갈래(決めたわ、わたしは今、あなたに会いに行く)

- BUNGEE (Fall in Love)

 

快活なサウンドに合わせ、指で作ったVサインで「あなた」に狙いを定めたのなら、その心に向かって真っ直ぐに”落ちて”いく。

 

「あなた」に狙いを定めるという意味ではデビュー曲の『CUPID』と比較出来るのではないでしょうか。

 

”あの頃”の「わたし」は、ただひたすらに「あなた」を待っていた。自分1人ではどうすることも出来ず、結局は恋のキューピッドに頼ってしまうわけですが、『BUNGEE』では「わたし」は「あなた」を待つのではなく、自信たっぷりに自分から会いに行く。

 

この『BUNGEE』でのカムバックはファンにとって、そしてメンバーにとってもかけがえのない思い出となったのではないでしょうか。このとき、OH MY GIRLはデビューから1500日以上も経ってから地上波の音楽番組で初の1位を獲得し、”成長型アイドル”の名を手にしました。

 

こんなにも長い間、少女のようで、童話のような世界観を絶えず追求してきた彼女たち。振り返ると、その”恋”を描いた物語の中には常に「わたし」と「あなた」というキーワードが存在していたように思います。

 

冒頭にも述べましたが、そのふたりの物語は恋の物語であると同時に、ファンとの物語でもあるのではないでしょうか。物語の序盤は、「わたし」は「あなた」についていく方を望んでいました。しかし、”恋”という事象を自分の世界に落とし込み、その複雑な精神世界を理解していくなかで、いつしか「わたし」が「あなた」を連れていくようになっていました。

 

去年の10月にMnetのQueendomという音楽番組で披露した『게릴라(Guerilla)』は、まさにそんな「わたし」の"成長物語"を如実に映し出すものだと感じます。

 

 

소중하게 지켜온 너와 나의 모든 것을 여기
(大切に守ってきた、あなたとわたしの全てをここに)
 
지금이야(今よ)
 
- Guerilla

 

”너와 나의 모든(あなたとわたしのすべて)”

 

この言葉が、デビュー以来OH MY GIRLというグループが歩み続けてきたファンとの物語の集積を指すものではないのだとしたら、他に何を意味するのでしょうか。

 

あんなにも可憐で、不安げで、恋の病に翻弄されていた少女たちが、今や自ら「あなた」の手を取り、先陣を切って荒れ狂う大海原へと引き連れていく。

 

そんなことを思い浮かべながら『Guerilla』のパフォーマンスを見ていると、絶叫したいほどの感動が身体中に押し寄せてくるのです。

 

”이제 펼쳐 질 꺼야 너와 우리의 세상(今広がっていく、あなたとわたしたちの世界)”

 

『OH MY GIRL!』の茶目っ気たっぷりな歌詞が『Guerilla』まで通ずる一連の物語を貫くとき、果たして「あなた」と「わたし」の物語は、絶えずそこに存在し続けたのではないでしょうか。

 

 

 

ゆっくりでもいいから、これからもおまごるの皆様と一緒に一歩二歩と歩んで行けたらなぁ…。そんな風に思いながら、当記事を執筆させて頂きました。

 

ここまでスクロールして下さった方々へ。こんなにも長い”妄想録”をお読みいただき、本当にありがとうございます。